K. Inoue
(更新)
英語の注目度と必要性の高まりに呼応して学習者の方々の勉強熱も高まっています。
そんな中で、いきなりTOEIC対策問題集を解いてみたり、はじめから「実践」をうたったライティングやスピーキング教材に手を出してみたりと、英語の基礎基本を置き去りにした学習をしてしまっていませんか?
中学英語は、英語学習の根幹をなす最も重要な基礎基本を教えてくれるものです。中学英語を理解することなく、より高度な英語を理解したり技能として身に付けたりすることは不可能と言ってもいいでしょう。
それだけ重要な中学英語を基礎基本から徹底解説する連載【大人のやりなおし中学英文法】。今回は「進行形の使い方」についてご説明します。
突然ですが連載8回目となる今回は、<第4文型>と呼ばれる文の型について見ていきたいと思います。
「え、いきなり第4?ていうか文の型って何?第1や第2、第3文型もあるの?」と思われるかもしれませんが、実は文型についてはこれまでにご紹介してきた英文である程度カバーしています。
まずはそのあたり、文型の基礎知識の確認から始めて、第4文型をマスターしてもらいたいと思います。
英語には「文型」と呼ばれる、文章を形作るための「型」があります。
簡単に言えば文章を作るための土台のようなものだと思ってください。
そしてその「型」はS(主語)・V(述語動詞)・O(目的語)・C(補語)の4つの要素の組み合わせによって、一般に以下の5つのパターンに分類されます。
基本的にあらゆる英文はこれら5つの文型のいずれかによって成り立つと言われています。文型を知ることで、あらゆる英文の仕組みが理解できるようになると言っても過言ではないかもしれません。
では第1から第3文型までをまず簡単にご説明します。
(過去の記事Vol.1とVol.2もご参照ください。)
第1文型SVは、S(誰・何が)とV(どうする)だけでできる文章のことです(Vol.2参照)。
という具合です。
ただ、SとVだけでは文意がとても味気なく情報量も少ないため、普通は「どこで」とか、「いつ」といった補足的な情報を伴います。
こうした場所や時を表す補足情報はMの記号で表します。
( )の部分がMです。
第2文型SVCは、Vを挟んでSとCがお互いにイコールの関係で結ばれるような文章のことです(Vol.1参照)。
代表的なのはbe動詞を用いた文章です。
be動詞以外には、
などがあります。
主語Sとイコールの関係になる “a science teacher” や “sick” のことを補語Cと呼びます。
補語は普通、動詞Vの直後に置かれ、その品詞は名詞(「先生」、「テニス」など、人や物事の名称を表すもの)や形容詞(「気分が悪い」、「美しい」など、名詞の状態や様子を説明するもの)になります。
第3文型SVOは、ある動作が対象に力を及ぼすことを表す文章のことです(Vol.2参照)。
動作の対象である “tennis” や “a letter” のことを目的語Oと呼びます。
目的語は普通、動詞Vの直後に置かれ、その品詞は必ず名詞(「テニス」、「手紙」など、人や物事の名称を表すもの)でなければなりません。
なお、第2文型や第3文型もMを伴うことが多くあります。
これまでの記事で扱ってきた英文は、全てこれら第1~第3文型のいずれかの文です。改めて復習や音読をされる際、ぜひ文型も意識してみてください。
ではここから第4文型SVOOについてです。
まずは例文を見てみましょう。
“My father”「お父さんが」(S)と “gave”「与えた」(V)の後ろに、「誰に」を表す “me”(O)と「何を」を表す “a watch”(O)の2つの名詞が並んでいます。
このように、「誰に」と「何を」がそれぞれ2つの目的語となって並ぶ文章が第4文型です。
両者を区別するために、前者を「間接目的語」、後者を「直接目的語」と呼びます。
第4文型で使われる動詞は、“give” のように「誰かに何かを渡す」といった意味を持つ場合がとても多いです。
これらの例文では、「腕時計」や「手紙」といった物に限らず、「英語という知識」や「話の内容」なども含めて、いずれも「誰かに何かを渡す」という意味があることがお分かりいただけるでしょうか。
そしてさらに大切なのは、結果的に「誰か」は「何か」を「受け取る(所有する)」ことまで意味しているということです。
たとえば “She sent me a letter.” という文では、「私」は「手紙」をすでに受け取っていることをニュアンスに含んでいます。手紙を送った(ポストに投函した)けれど、配達の何らかの都合でまだ届いていない、という可能性は普通は考えられません。
上記のような第4文型を作るタイプの動詞のことを「give型の動詞」と呼び、上記の他にも次のような動詞があります。
繰り返しますが、いずれも「誰かに何かを渡す」に繋がっていますね。
逆に言えば、動作の対象となる「誰か」や「何か」が欠けてしまうと文が完全に成立すると必ずしも言えない、ということも大きな特徴です。
“lend”「貸す」を例に挙げると、「貸す相手」と「貸すもの」のいずれかが欠けてしまうと「貸す」という行為は成立しませんね。
give型の動詞が二つの目的語を必要とする、つまり第4文型を作る理由がお分かりいただけるのではないかと思います。
ここまでの第4文型の特徴をひとまずまとめると次の通りです。
give型の動詞を使った第4文型が基本であるとご説明しましたが、実は「buy型」というタイプの動詞も第4文型を作ることができます。
give型の動詞が「誰かに何かを渡す」を表すのに対して、buy型の動詞は「誰かのために何かをする」を表します。
buy型の動詞には次のようなものがあります。
例文を見てみましょう。
語順はgive型の場合と同じですが、buy型の場合は意味が多少異なり、「必ずしも誰かが何かを受け取る(所有する)」ことまで意味するとは限りません。
またbuy型の動詞は、“She made a necklace.”「彼女はネックレスを作った」のように「何を」を表す一つの目的語(直接目的語)だけでも文章を成立させられることも特徴です。
buy型の動詞の一つとして “do”「してあげる」を使った慣用的な表現がありますのでご紹介します。日常的にとてもよく使われるのでぜひ覚えておいてください。
誰かに頼みごとをしたいときに頻繁に使われる表現です。
“Could you~?” にすると丁寧さが増します。“Will/Would you~?” という使い方もできます。
第4文型は第3文型に転換することができます。
違いがお分かりいただけるでしょうか。
第3文型では「何を」を表す直接目的語が動詞の直後に置かれ、「誰に」を表す間接目的語が “to me” のように “to” を伴って後ろに移動しています。
“to me” は文型上はMの扱いになるため、文型の要素(S・V・O・C)からは除外され、結果的に “She sent a letter (to me).” の第3文型になる、ということです。
このように、give型の動詞を用いた第4文型の文は、直接目的語を前に移動させ、間接目的語に “to” を付けて後ろに置くことで第3文型の文に転換することができます。
buy型の動詞を用いた第4文型の文を第3文型に転換する場合には、次のように間接目的語に “for” を付けます。
第4文型と第3文型の間で形を互いに転換できるとは言っても、どちらも全く同じ意味を表すわけではありません。
また意味や構造上のいろいろな理由により、どちらか一方がより好まれるという場合もあります。
特に “to/for” を伴う第3文型の場合、「誰に」という意味が強く押し出されます。
これは、「新しい情報や大切な情報、伝えたい情報を文の後ろに置こうとする英語の傾向」のためです。
たとえばこの文には、「他の人間ではなくあえて自分に送ってきた」ことに意識の重みがあり、文脈や言い方によっては、「何で自分に?」とか「どうだ自分こそが送り相手だぞ(お前じゃないんだ)」といった含みまで持たせることができます。
同じ理屈で、第4文型のままであれば、「手紙」に焦点が当たっていることになります。
英語では「新しい情報」はなるべく文の後ろに、反対に「古い情報」はなるべく文の前の方に置こうとする傾向があります。
そのため、「古い情報」である代名詞(すでに登場した人物などを表す言葉であるため古い情報として扱われる)が間接目的語になる場合、直接目的語よりも前に置いた第4文型の文を用いることが好まれます。
“him” は “Mike” のことを指していますが、マイクはすでに1文目で登場しているためこれは「古い情報」ということになり、「新しい情報」である “some advice” よりも前に置いた方が自然に響きます。
「誰に」を表す間接目的語が長い語句になってしまう場合、第3文型の形にします。
間接目的語 “all the members of her team”「彼女のチームのメンバー全員」が大きな語句(意味のカタマリ)となっていて、これが第4文型の形だと直接目的語 “the story” がやたらと動詞 “told” から離れてしまい、結果的に直接目的語の邪魔になってアンバランスさと意味の取りづらさを生んでしまいます。
これを回避するために、第3文型の形の方が好まれます。
いかがだったでしょうか。
今回、当連載では初めてS・V・O・Cという文型を表すための記号を使って解説してみました。
英文法を学習する際、こうした記号を知っておくととても役に立ちます。文型が見えれば文章が見えるようになるからです。
次回は今回の延長で第5文型について解説しますが、それを踏まえて今後少しずつでも構いませんのでS・V・O・Cを学習に取り入れてみてください。
きっと英文を見つめる景色が広がるはずです。